愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
ぐす、と洟を啜ると、その音に気づいた遼河さんが、大きな手で頭を撫でてくれる。
映画の内容に感情移入する気持ちと、遼河さんを愛しく思う気持ちとが混じり合い、ますます泣けてきてしまう。
見かねた彼がポケットを探り、ハンカチを差し出してくれる。小さくお礼を言って濡れた目元に押し付けると、ふわりと遼河さんの香りがして胸がいっぱいになった。
映画の後は、泣き顔を隠したくてすぐにシャワーを浴びさせてもらった。
今日のために遼河さんが用意してくれた花柄のルームワンピースに着替え、髪を乾かして薄化粧をすると、ダイニングへ向かう。
身だしなみに気を遣ったのは、遼河さんが呼んだ出張シェフが、キッチンでディナーの下ごしらえをしているからだ。
この辺りで創作フレンチのお店を経営している方らしく、今日はお店で出しているのと同じコースを、ここで再現してくれるらしい。
遼河さんはシェフの手際をダイニングの椅子に座って眺めつつ、ひとりでワインを開けていた。