愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
短い旅を終えた私たちは、翌日の夕方にユリシスで東京まで戻ってきた。
昨晩ベッドを共にして以降、遼河さんは本気で妻を溺愛する夫のような言動を続けていて、今さら期待するなと言われても無駄なくらい、私の想いも高まっていた。
それでも、車窓から見る景色が見慣れたものになってくると、夢から覚めてしまったような寂しさもあった。
これかも同じ家に帰って、毎日一緒にいられることは変わらないのに、私はずいぶん欲張りになってしまったみたいだ。
「なんだ? あの車」
自宅のすぐそばまで来たタイミングで、遼河さんが怪訝そうに呟いた。
車の揺れに身を預けて軽く目を閉じていた私は、その呟きに反応し、彼の見つめる先に目を凝らす。
我が家の門の前に、黒塗りの車が一台、ハザードランプを点けて停車していた。
「完全に、うちの前に停まっていますね。遼河さんのお知り合いでしょうか?」
「……嫌な予感がするな」
低い声でそう言った彼は、速度を落として自宅の門へ近づいていく。
そして、怪しげな黒塗り車の後ろに車をつけると、「小雪は待ってろ」と言い残し、ドアの外へ出て行った。