愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「よければお手伝いしますよ。カメラは得意な方なので」
「いえっ、そんな。こちらの仕事ですので……」
めっそうもないとかぶりを振ったものの、新町さんは私の手からそっとカメラを取って耳打ちした。
「社長の仏頂面は、今日のスケジュールを組んだ僕のせいでもあるんです。この後も広報部の依頼で動画撮影が控えているので、苦手な愛想笑いを強いられる予定が重なってカリカリしているんですよ」
それが真実なのか、新町さんが優しさでフォローしてくれているだけなのかはわからない。しかし、準備不足で慌てていた気持ちが少し落ち着いた気がする。
「――新町。撮るならさっさと撮れ」
一方、氷室社長の方はやはり不機嫌そう。
冷たい声音にビクッとしてしまうけれど、新町さんはどこ吹く風。鷹揚な調子でカメラを構える。
「そんなに怖い顔をしていたら、誰もうちの会社に入ってくれませんよ。はい、こっちに目線と笑顔」
「俺の表情ひとつで志望先を変えるような人材はいらない」
「それじゃ人事部も困ってしまいますよ。ねえ仲真さん」
「えっ? えぇ……」
どちらの味方をすべきかわからず、曖昧に返答する。社長はそんな私を一瞥すると、軽くため息をついた。