愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「無駄な時間を取らせて悪かった。しかし、人事部の方も来年はもう少し段取りよくやってくれ」
「申し訳ございません……。直前に担当者が変更になったために引継ぎに不備がありました。以後、同様のことがないよう努めてまいります」
「ああ。そうしてくれ」
社長は冷たく言った後、新町さんの構えるカメラに向かって、まるで別人のように柔和な笑みを浮かべる。
こちらのミスなので反論はないし、色々な顔を使い分けられるのはさすがだと思う。
しかし、社長の物言いや態度には、どうしても苦手意識が植え付けられてしまう。これ以上突っ込まれるような不手際がないようにしなければ。
新町さんの協力のおかげで無事に写真撮影まで終えると、私は社長のデスクの前で頭を下げた。
「本日はお忙しい中お時間を割いていただきありがとうございました。インタビューページの内容とレイアウトが固まりましたらメールでご送付しますので、一度ご確認を――」
「必要ない」
そっけない声が飛んできて、社長に向けた笑顔が固まる。
呆然と瞬きを繰り返す私に、氷室社長は冷めた眼差しを送った。