愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
確かにあの日の私は、外の様子を知りたくて、一度あの部屋の小さな窓を開けた。しかしその後、閉める動作をした記憶がない。
あくまで細く、片目で覗ける程度にしか開けなかったから、部屋の全貌までは見えないと思う。
でも、自信満々な小鹿さんの態度を見る限り、きっと……。
何も言えずに立ち尽くす私の前で、小鹿さんは片手に持っていたスマホを操作し、ネイルの施された綺麗な指先で、画面を次々スワイプする。
こちらから画面は見えないが、彼女がなにをしているのかなんとなく想像がついて、視界が暗くなっていく。
「彼、氷室エクスプレスの企画ではいつも撮影を担当する社員だったからかしら。思わず、持っていたスマホのカメラをその隙間にかざしたそうよ。ねえ仲真さん。あなた、なにが映っていたと思う? ふふっ」
小鹿さんは愉快でたまらないと言わんばかりに、鼻から笑い声を漏らす。窓の隙間にかざされたスマホのカメラがなにを捉えていたのか、もはや見るまでもない。
それでも小鹿さんは、「ああ、これこれ」と上機嫌に言うと、私の眼前にその画面をずいっと差し出してきた。
そこには、バスルームのドアに背を預け、膝を抱えている私の姿が映っていた。
ズームになっているせいか少し画像は粗いものの、知り合いであれば判別できるだろう。