愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

『好き』のふた文字を口にした瞬間、遼河さんがハッとしたように目を見開いた。

 それから少しだけ空いていたソファの距離を詰め、私が太腿の上で軽く握っている手の上に、彼の大きな手が重なる。

 降り注いだ視線は優しかった。

「ありがとう。でも、きみがそんなふうに自信を無くしてしまったのには理由があるんじゃないのか? 鬼瓦山彦がうちに来訪したのがきっかけ?」
「それも、あります……」
「それ〝も〟? 他にも何かあるのか?」
「実は……」

 今でも思い出すだけで胸の辺りに鈍い痛みを感じる、小鹿さんとのやり取り。その一部始終を思い出して、遼河さんに伝えた。

「小鹿美羽……。ずる賢い女性だとは思っていたが、まさかきみに直接そんなことまで……。一度、ハッキリわからせないと駄目なようだな」

 ぐっと眉間に皺を寄せて険しい顔をした遼河さんが、独り言のように呟く。その直後にパッと顔を上げ、私の肩に手を置くとまっすぐな視線を向けてくる。

「あんなつまらない女にそそのかされて、自分を見失うな。誰がなんと言おうときみは魅力的で、俺にとって唯一無二の大切な存在だ。……俺も、心の底からきみのことが好きだ」


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