愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 しかし、彼女が怒るのも仕方がない。彼女の中で、私は遼河さんに遊ばれている地味な女という位置づけだったのだ。

 あんな風に呼び出されて威嚇みたいなことはされたけれど、本気でライバルだとは思っていなかったはずだ。

「では、そろそろ始めまーす」

 リーダー格の男性スタッフの合図で、カメラが回り始める。

 遼河さんはさすがに一度私から手を離し、正面のカメラに向かってふたりでしっかりと挨拶をした。

「今日は、動画をご視聴の皆様に私から紹介したい人がいます。隣にいる、私の妻です」
「氷室エクスプレスをご覧の皆様、初めまして。氷室小雪です」

 カメラの前で喋るなんて経験は初めてなので、小鹿さんのようにはうまくできない。

 でも、もう覚悟を決めたから――。

「所属している氷室エナジーの人事部では、主に新入社員の採用関連と、人事評価の仕事に携わっています。いわゆる花形部署ではありませんが、組織になくてはならない仕事をしているという自負があります。社長である夫がいつも話すことですが、氷室エナジーではどんな部署のどんな社員も、会社というひとつの車を動かす部品だという認識です。どの部品が欠けても、安全な走行はできない。私もそのことを肝に銘じて、日々の業務にあたっています」

 そこまで話し終えると、遼河さんと目を合わせて語り手をバトンタッチする。

 彼は小さく息を吸い、カメラに向かって真摯に語り掛ける。

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