愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「こんばんは。ご無沙汰しております、社長。こちら、妻の小雪です」
「おお、話題の小雪さんですな。お会いできて光栄です」

 父との繋がりで以前から交流のある、電子部品メーカー企業の社長に挨拶した際も、こんな調子で握手を求められた。

 隣にいた奥様も、親しげに声をかけてくれる。ふたりとも父と同世代なので、大先輩だ。

「社長夫人ってだけで、色眼鏡で見られることが多いわよね。私も散々虚勢を張ったものだから、あなたみたいに自然体でいられる女性のことは応援したくなっちゃうわ」
「ありがとうございます。自然体でいられるのは、夫のおかげなんです」

 まさか、小雪がそんな風に俺との関係を説明してくれるとは思わず、第三者の前で不覚にも胸がときめいた。

「まぁ、素敵。氷室社長の愛があなたをそうさせたのね」
「氷室社長ご自身にも、小雪さんからのいい影響があるのでしょうな。以前お会いした時は人を寄せ付けない雰囲気がありましたが、今はとても穏やかで余裕のある実業家に成長されたように見えます」

 それほど明確な自覚はなかったが、おそらく言われた通りなのだと思う。

 仕事への情熱や向き合い方は以前と変わらないものの、社内で俺と直接かかわる人間関係の調整など、新町に投げることの多かった部分が、今ではだいぶ減っている。

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