愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「そうかもしれません。小雪は僕にはもったいないほどの女性なので」
彼女の肩に手を置き、目を合わせて微笑む。
「こういう世界には意地悪な人もいるけれど、みんながみんなそうじゃないわ。私たちは味方だから、頑張ってね」
「お父様にもよろしくお伝えください」
「ありがとうございます。承知しました」
離れていく社長夫妻に夫婦そろって一礼し、軽く息をつく。
〝味方〟への挨拶は大体終わっただろう。さて、次は――。
「遼河さん、来ました。あの方……」
ホテルの建物とガーデンを繋ぐ出入り口の方を向いた小雪が、俺のジャケットを軽く掴んだ。
遅れて来たというのに、スーツがはち切れそうなほどふんぞり返っている、ふてぶてしい男。
「来たか、鬼瓦。……小雪、行くぞ」
「は、はい」
大股でまっすぐ彼のもとを目指す俺に、小雪が遅れてついてくる。
鬼瓦がこちらに気づくと同時に、俺はジャケットの内ポケットに手を入れ、スマホを取り出す。そして、あらかじめ示し合わせていた相手に電話をかけると、再びポケットの中に戻した。