愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 俺はようやくスマホをポケットから出すと、スピーカー機能をオンにして鬼瓦に渡す。

 怪訝そうにそれを受け取った彼は、画面に映る【通話中 鬼瓦夫人】の文字を見てぴしりと表情が固まった。

 彼の指はほぼ反射的に通話終了の【×】ボタンを押そうとしたが、その前にスピーカーからけたたましい叫び声が聞こえた。

『あんたぁ~~~~~っ! 離婚よ! 即離婚よっ! 慰謝料ふんだくってやるから、覚悟しておきなさぁぁぁぁいっ!』

 鬼瓦夫人は言いたいことを言ってスッキリしたのか、通話は直後にプツッと途切れる。

 当の鬼瓦は、呆気にとられた顔のまま、俺の手にスマホを返した。

「終わりだ……妻を怒らせた……。なにもかも搾り取られる……」

 虚ろに呟くその姿は、いきなり十歳くらい老けたかのごとくしおれていた。だからといって鬼瓦を許すことなどないが、多少留飲は下がった。

 もう、この男に用はない。

 俺はずっと後ろで俺たちの様子を見守っていた小雪の肩を抱き、鬼瓦のもとを離れる。

「遼河さん……ありがとうございました」

 鬼瓦を懲らしめたことに対して、感謝してくれているのだろう。

 俺自身がそうしたかったからしたまでなので、改めてお礼を言われるほどのことじゃない。俺は彼女の肩に置いていた手をスッと腰に回し、より密着した体勢で彼女の耳にささやく。

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