愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

『毎回、動画のコメント欄には氷室社長にあてた応援メッセージやプライベートに関する質問が多く届いているのですが、今日はその中からひとつご紹介しますね』

 社長の隣にいるインタビュアーの女性が、手元の原稿に視線を落とす。広報部に所属する、華やかな女性社員だ。

 社長と一緒に堂々と画面に映る姿には自信が満ち溢れ、すごいなぁと感心する。

 一方で、ああいう〝一軍〟の人たちはやっぱり苦手だな……とも思うけれど。

『いつも興味深く拝見しています。私は氷室社長のファンなのですが、社長が恋人を助手席に乗せるとしたら、自社のどの車を選びますか? とのことです。社長、いかがでしょう』

 広報部の女性の問いに、社長は軽く目を伏せる。

 撮影する側も、彼の眉目秀麗さ込みで宣伝する気満々なのだろう。なにげない表情なのに社長の顔がアップにされ、長い睫毛が頬に影を落としているのが見えた。

『ユリシスなんか、いいかもしれません。氷室エナジーが開発したEV車の中でも、騒音や振動がダントツで少ないんです。私の自宅のガレージにも一台ありますよ』

 ユリシス……確かに、庭のガレージに置かれている。

 目が覚めるような青いボディは、その名前の由来になった蝶と同じなのだと、社長本人が教えてくれた。

 好きなものを語る時の彼はちょっと饒舌で、それがなんだかうれしくて……。

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