愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 帰宅すると、いつも通り父の靴が先に玄関にあった。

 いつも通り夕食の準備をしているであろう父に声をかけるためようとリビングダイニングに向かうと、ドアを開ける前に中から父の話し声が聞こえてくる。

「いつって……それはハッキリ言えないんだ。待たせてしまって悪いとは思ってる」

 小さくドアを開けて隙間から中を覗くと、父はダイニングで立ったままスマホを耳に当てていた。

 横顔しか見えないが、やや困った顔をしている父が気になって、ついその場で立ち聞きしてしまう。

「きみの気持ちはわかっているつもりだが、小雪の幸せを親としてなにより優先したいんだ。アイツが巣立っていくまでしっかり見守らないと、天国の妻にも顔向けできない」

 私の話? それに、お母さんのことまで……。

 なんとなく胸がざわめくのを感じていたら、父がスマホを反対の手で握り直す。

 咳払いをして顔を上げた父は、見たことがないくらい険しい表情をしていた。

「もしもそれが不満なら、他の男を探した方がいいだろう。俺と一緒にいたところで、将来の確かな約束はなにもできないんだから」

 ドクン、と鼓動が重い音を立てて揺れた。

 電話の相手はきっと、父がお付き合いしている女の人だ。

 しかし、父はその人との別れを考えている。いつまでも独り身で、恋人さえいない私のせいで。

 親としての責任感や愛情で言っているのはわかるけれど、そんなのダメだよ……。

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