愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
社長室へ来るのは二度目だけど、まったく慣れる気がしない……。
そんなことを思いつつ、ドアをノックする。
中から新町さんの「どうぞ」という声がして、おそるおそる室内に足を踏み入れる。
「失礼いたします。仲真です」
挨拶をして、伏せていた目を上げる。
氷室社長はデスクではなく手前の応接ソファに腰かけており、手に持っている書類を真剣な表情で眺めていた。新町さんが、彼の対面に座るよう促してくれる。
革のソファを沈ませてそっと腰を下ろすと、氷室社長が書類をデスクに置いて、私をまっすぐな視線で射貫いた。目力の強さに思わずどきりとする。
「急に呼び出して悪かったな」
「いえ……。それで、お話というのはいったい……」
「単刀直入に言う。俺と結婚してくれないか?」
思いもよらなかったセリフに、頭が真っ白になる。
今、なんて……? 聞き間違いとしか思えず、半信半疑で聞き返す。
「今、結婚……とおっしゃいましたか?」
「ああ、そうだ。この条件で、俺の妻になってほしい」
さっきまで彼が眺めていた書類が、テーブルの上を滑らせるようにして差し出される。
一番上には【覚書】とあり、まるで契約書のよう。