愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
戸惑いながら手に取り、上から順に目で追っていく。
【これから夫となる者、氷室遼河(以下、「甲」とする)、及び妻となる者、仲真小雪(以下、「乙」とする)は、」甲乙間の婚姻について、次の通り契約する。
第一条(目的) 本契約は、甲乙間の夫婦生活において必要なルールを定め、結婚生活を円滑に運営することを目的とするものである――】
その下にも、紙いっぱいにずらりと、生活の細かなルールや家計の管理等の細かい決まりを定めた条文が並んでいる。
な、なにこれ……。
「読んでもらった通り、俺はこの条件できみを娶るつもりだ」
混乱する私に社長が説明を加えるけれど、その表情や声音からはまったく感情が読み取れず、理解が追いつかない。
「あの、なぜ社長の結婚相手が私なんですか? どう考えてもおかしいと思いますが……」
「それは、僕が推薦させていただきました」
これまで社長の背後で成り行きを見守っていた新町さんが、遠慮がちに挙手をして社長の隣に座る。いつも通り、社長とは対照的ににこやかだ。
「率直に申し上げて、社長は結婚にも女性にも興味がありません。しかし現在、ご本人の意思とは無関係に、結婚しなければならない状況でして……僕はその相手探しを仰せつかりました」
「……はい」