愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
――社長夫人。その大仰な肩書きを新町さんが口にした瞬間、自分には荷が重すぎると完全に怖気づいた。
今の私にとって〝結婚〟という言葉には正直魅力があるけれど、こんな形でチャンスを与えられても、飛びつくわけがない。
第一、私はあのインタビューの日以降、氷室社長がすっかり苦手なのだ。
「大変光栄なお話ではありますが、私には恐れ多すぎて……。他の方にご依頼なさってください。私は仕事がありますので、これで失礼します」
ふたりの目を見ずに言って、そそくさと席を立つ。
この居たたまれない空間から早く逃げ出したい……。
そう思いながら、社長室のドアノブに手を伸ばした瞬間だった。
「父親を自由にしてやりたいんじゃないのか?」
「え……?」
背後から飛んできた社長の声に反応し、思わず振り返る。
どうして今、父の話が?
「社長。その話は今彼女に伝えるべきことでは――」
「こう見えて新町は仕事のできる男だ。きみの父親の職場に出向いて、交際相手がいること、しかし娘であるきみのことが気がかりで再婚には踏み切れないでいるという現状については調べがついている」