愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「すみません。動画で拝見したことがあったので、つい」
「そうでしたか。氷室エクスプレス、見てくださっているんですね。ありがとうございます」

 口角を上げて無邪気に微笑む姿は愛らしく、この人も一軍だな、なんて思う。

 氷室社長も、結婚相手に選ぶならこういう女性にすればいいのに……。

 小鹿さんと別れてエレベーターに乗り込んでからも、胸の中にはまだわだかまりが残っていた。

 結婚の話を断るだけでよかったのに、『部品』だなんて言葉まで持ち出したのは、明らかにやりすぎだったよね。

 左遷とか、減給処分がくだされたらどうしよう。いち社員の戯言だと聞き流してくれればいいけれど……。

 ため息をついて、エレベーターの回数表示を見る。

 なかなか動かないので怪訝に思っていたら、自分がボタンを押していないだけだった。

 ……なんだか最近、うまくいかないことばかりだ。

< 37 / 206 >

この作品をシェア

pagetop