愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「えっ。断っちゃったの? もったいな~い」

 サラダを食べ終え、メインのパスタを楽しんでいたところで、私は例の契約結婚について打ち明けた。琉美は目を見開き、派手に残念がる。

「まぁ、経済的な面だけで言えばそうかもね。契約書、最後までちゃんと読んでないけど、金銭関係は全部社長が負担するって書いてあったのは覚えてるから」
「いやいや、私が言ってるのはそういうことじゃなくて。あの顔を毎日間近で拝める機会をみすみす逃すなんて……! って意味よ。でもそっか。そういう人の近くにいること自体、小雪にとっては拷問なのか」

 さすがは私という人間を最も理解している友人である。パスタをフォークにくるくると巻きつけながら、心情を代弁してくれる。

 私はスープパスタの湯気で曇った眼鏡を外し、畳んでテーブルの上に置いた。

「うん。たぶん、毎日委縮しながら過ごすことになるだけ。それに、社内の他の女性社員たちからの目も怖いよ。なんでコイツがって反感を持たれるのが簡単に想像できるもん」

 最悪、刺される可能性もあるのではと思う。

 学生時代はスクールカーストなんてものがあったけれど、会社員になった今でも、目に見えづらくなっただけで、薄っすらと似たような概念の存在は感じる。

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