愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「だね。私の悪いところかも。社長の本心はともかく、もう少しポジティブに考える癖をつけようかな」
「そうそう。私はあの氷室遼河に求婚された女なのよ~って、高飛車メンタルで生きていきなよ」
「それは極端じゃない……?」
琉美と笑い合っているうちに、結婚騒動で悶々としていた気持ちが薄れていく。
あとは、父に心配をかけないように家を出る方法さえ見つかればいいのだけれど……それが一番難しい問題な気がした。
会社に戻ると、月ごとの人事評価のデータを分析、集計して閲覧しやすくまとめる作業を進める。地味な仕事だが、私は好きだ。
一度、同僚のひとりがこの作業をAIに丸投げしてみたところ、本来の人事評価とは少しずれたデータが導き出されてしまったらしい。
営業など、達成度が数字でわかりやすい部署なら利用しやすいのかもしれないが、会社を動かしているのはやはり人間。目に見える結果以外の評価は、まだ人間にしかできないようだ。
他の仕事と並行しつつ、黙々と作業すること数時間。
定時の午後六時前にタスクは完了していたので、翌日の準備を済ませて帰り支度をする。
ベージュのノーカラーコートを羽織りマフラーを巻いたところで、なんとなくオフィスがざわざわとし始めた。