愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 ……なんだろう?

 同僚たちの視線を追って、オフィスの入り口に目を凝らす。

 そこにいた人物とふいに目が合い、ぎょっとする。

 私の姿を認識するや否やスタスタと歩み寄ってくるのは、人を惹きつけるオーラをこれでもかというくらい放つ氷室社長だった。

 ぽかんとしているうちに、彼が目の前までやってくる。

「仕事は終わったようだな。この後、なにか予定は?」
「じ、自宅に帰るだけですが……」
「なら、食事に付き合ってもらおう。店を予約してある」

 サラッと彼が放った発言に人事部全体がどよめき、ここにいる人たちの視線を独占してしまうのがわかった。

 居たたまれなさすぎる……。だいたいなぜ、私が氷室社長と食事を?

 結婚話は丁重にお断りしたはずだし、仕事以外では正直あまり彼と関わりたくない。

「あの、申し訳ありませんがご遠慮させていただきたく――」
「先日の件は唐突すぎたとこれでも反省しているんだ。……謝罪くらいさせてほしい」

 伏し目がちに言う社長は本当に申し訳なさそうにしている。

 意外な姿に面喰らってしまい、ますます混乱する。

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