愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「こちらのお席へどうぞ」

 店内でも特等席といっていいような窓際のテーブルに案内され、ウエイターが引いた椅子に恐縮しながら腰を下ろす。

 後から社長も着席すると、食前酒の注文を尋ねられた。

「きみは、アルコールは飲めるか?」
「は、はい……人並みには」

 聞かれるままに答えたけれど、こんな高級レストランでお酒を飲んだ経験はないので、否定すればよかっただろうかと悩む。

 しかし、そのうちに社長が「キールロワイヤルを」とウエイターに頼んだため、今さら飲めないとは言えなくなってしまった。

 ウエイターがテーブルを離れたところで、社長が小さくため息をつく。

「店内の空気がやけに甘ったるいな」
「と、言いますと?」

 庶民の私にとって居たたまれない空気なのは痛いくらい実感しているけれど、甘ったるい空気とはどういう意味だろう。

「わからないか? 今日はバレンタインだから、どのテーブルでも恋人や夫婦がうっとり見詰め合ってる。ま、中には不倫カップルもいるのかもしれないが」

 言われてみれば、どのテーブルも男女ふたり客ばかりだ。それにしても、社長の発言にぎょっとしてしまう。

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