愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 氷室自動車グループは彼のお父様が代表を務める、超巨大企業。氷室社長自身もいずれそちらの経営に関わっていくというのは一般社員にも広く知れ渡っている情報だ。

 でも、旗色が悪くなるというのはいったい……。

「俺は氷室エナジーのためを思って、本来あまりやりたくないメディアへの露出も断らずにここまでやってきた。ルッキズムに囚われるのはくだらないと思うが使えるものは使う主義だし、それが功を奏している実感もある。……しかし、こんな弊害があるとは想像していなかった」

 彼が疲れたように呟いた頃、空いた前菜の皿が下げられて、次の料理がテーブルに届く。

 陶器の器に映える赤いオマール海老が、ソースと共に繊細に盛りつけられている。ペアリングの白ワインは、少なめに注いでもらった。

「氷室自動車グループで専務を務める、鬼瓦(おにがわら)山彦(やまひこ)という男がいる。アクの強い人物で父ともあまりそりが合わないようだが、現状、父には逆らえない。そこで鬼瓦が目を付けたのが、息子である俺だ。メディア露出の多い俺がなにか不祥事を起こせば父も責任を問われて失脚すると見込んでいるらしい。奴は俺の周囲をうっとうしい(はえ)のように嗅ぎまわっているんだ」

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