愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 社長は忌々しげに吐き捨てた後、オマール海老に手を付けないでいる私に気づく。

 単に彼の話に集中したいからそうしていたのだけれど、なにか誤解したらしい。バツが悪そうに苦笑した。

「すまない、食事中なのに言葉に配慮がなかった」
「もしかして、蠅のくだりですか? 不倫よりは気になりませんでしたが……」

 正直に思ったことを口にすると、彼はおかしそうに噴き出した。

 氷室エクスプレスの動画内で見せる完璧な笑みとは違い、こらえきれずに漏れてしまったという感じの笑顔。少年のような屈託のなさに、思わずどきりとする。

「きみが気にならないというなら、このまま話そう」

 不思議と、それ以降私たちを取り巻く空気がなんとなくやわらかくなった気がして、私は食事をしながら、氷室社長の置かれた状況、そして彼にとって結婚がどういう意味を持つのかを順に教えてもらった。

「その鬼瓦さんによって、女性ファンが多いイコール女性関係が派手、というストーリーを捏造されそうになっているんですね。だから結婚をして、彼やその取り巻きを大人しくさせたいと」
「そうだ。しかし、だからといって結婚したから安心、というわけでもない。根性の曲がったあの男のことだから、結婚相手さえ懐柔しようとする可能性がある。たとえば、俺の不倫をでっち上げることに協力すれば慰謝料が手に入るとそそのかしたり……」

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