愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
レストランを出た後、社長が家までタクシーで送ってくれた。食事も含め、代金はすべて社長持ち。
私は半額出すと言ったのに、結婚したらどうせ共同財産になるのだからと、聞き入れてもらえなかった。
まだ返事をしていないのに共同財産もなにも……と思ったけれど、社長が折れるとは思えなかったので心の中だけで呟いた。
自宅の前で車を降りると、社長も一緒に降りて来たのでぎょっとする。
「家の人に挨拶しなくていいか?」
「そ、それは結構です。父には『同僚と食事してくる』と言ってあるので……」
「それは残念。勝手に婚約者だと名乗って外堀から埋めてしまうのもいいかと思ったが」
「絶対にやめてください」
ふるふると小刻みにかぶりを振ると、氷室社長が意地悪な顔で笑う。どうやら、からかわれただけみたいだ。
「それじゃ、また会社で。返事が固まったら新町を通すか、直接社長室に出向いてもらっても構わない」
「わかりました。その時は改めてご連絡を――」
氷室社長と別れる前の挨拶を交わしていたその時、ふと視線を感じて辺りを見回す。
すると、ハザードを点滅させているタクシーの向こう側にいる人物と目が合った。