愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
……なにがおかしいんだ?
憮然としていると、新町が隣に腰を下ろして渋い顔を作った。
「社長。お言葉ですが、今の無茶ぶりはないですよ。仲真さんもそう思いますよね?」
「あの、失礼かもしれませんが……そう、ですね」
新町の言葉を受けて口元の手をどけた彼女は、ここへ来てから一番肩の力の抜けた表情で笑っていた。
ふたりが意気投合している理由はよくわからないが、社長室の空気が和んだようなので、まぁいいか、と思う。
「きみはどうも新町が相手の方が話しやすいようだから、契約内容の件に関してなにかあれば、彼に伝えてくれ。よほど突飛な内容でない限り付け加える」
「僕もそれがいいと思います。社長に遠慮して仲真さんが本音を言えなかったら、暗黒の結婚生活を送る羽目になりますから、条件はきちんと考えた方がいいです」
「あ、暗黒……」
小雪が目を瞬かせ、若干引いた反応を見せる。俺はお調子者の秘書をじろりと睨んだ。
「俺を人でなしのように言わないでもらえるか」
「人でなしだろ。初めて彼女をここに呼び出した時、いきなりお父さんの話を持ち出して脅すような真似をしたんだから」
「……その件はすでに誠心誠意謝罪している。蒸し返すな」
社長室に新町とふたりでいる時、彼は時たまこうして砕けた態度を取る。
というのも、彼とは同期入社で気心の知れた友人同士でもあるからだ。