愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 新町は元々小雪のいる人事部出身。調査・分析能力の高さや人当たりの良さを買われて活躍していたが、俺が社長に就任するタイミングで、秘書になってもらった。

 新町が得意なことは、ことごとく俺の苦手分野だからだ。自分にない能力を持っている人間がそばにいれば、日々の仕事が円滑になる。

 バレンタインの日に小雪を食事に誘い、謝罪すべきだと俺にアドバイスしたのも実は新町である。

 おかげで、けんもほろろだった彼女の態度がこうも軟化したのだから、やはり彼の力は大きい。

「しかし、タイミング的にお父さんには怪しまれなかったか? 健気な娘が、父親を自由にさせるために無理やり結婚するんじゃないかと」
「実は……父に話をする時に、氷室社長の立場を利用させていただきました。会社の大物と交際しているなんて、たとえ家族にも軽々しく話せることじゃないから、言い出すタイミングがなかったって……。ちなみに、バレンタインの夜の食事でプロポーズされたというストーリーまで勝手に捏造してしまいました。すみません」
「なるほど。あの日は実際に一緒にいたわけだから説得力があるな。そのストーリー、採用しよう。いずれ結婚指輪も必要になるな。――新町」
「言われると思って、準備してましたよ。仲真さん、左手を貸してください」

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