愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
新町はスッと腰を上げ、小雪の傍らに跪く。そして彼女の左手を取り、細く切ったコピー用紙を巻き付ける。
重なった部分にペンで印をつけると、俺のデスクの方へ移動し、コピー用紙に定規を当てて、長さを測っていた。
「おそらく八号が適当ですね。プロの計測とは違いますが、おふたりでブライダルジュエリーの専門店に出向く機会もないと思いますので、とりあえずこちらのサイズで注文しましょう。デザインの好みももちろん伺います。いくつか候補の店もピックアップしてあって」
俺の隣に戻ってきた新町が、熱心な様子でスマホをスクロールさせている。その様子を見ていた小雪が、やわらかく微笑んだ。
「なんだか、新町さんがご結婚されるみたいですね」
「えっ? いやいや……この無愛想な社長のご機嫌取りに忙しくて、恋愛してる暇もありませんよ」
「お前がモテないのを俺のせいにするな」
「くぅ……っ。動画じゃいつもすましてますけど、これが氷室の本性ですからね。契約結婚の条件に『暴言一回につき罰金いくら』とか、追加した方がいいと思います」
新町の大真面目な主張に、小雪がクスクス笑っている。
楽しそうでなによりだが、結婚相手は俺だ。婚姻届を出してふたりきりの同居を始めたら、新町なしで間が持つだろうか。
……ま、なんとかなるだろ。
胸によぎった不安を打ち消すように、俺は冷めたお茶をぐいっと喉に流し込んだ。