愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 彼女の寝室にはゲストルームをあてがえばいいし、さほど生活に変化はないだろう。

 自動車メーカーを経営する一族の息子に生まれたせいか、大人になったらガレージのある一軒家に住み、庭に出ればすぐに好きな車を眺められる、そんな環境で過ごすのが、漠然とした夢であり目標だった。

 その目標は叶い、自らの資産で購入したこの家に住み、乗る機会はあまりないにしろ、庭のガレージには好みの車が並んでいる。

 このままひとりで悠々自適に暮らせればそれでよかったが、まさか女性と一緒に住むことになるとは……人生、なにがあるかわからないものだな。

 小雪と暮らす新生活のイメージがなんとなくできてくると、俺はシャワーを浴びるためバスルームへと向かった。


 目まぐるしく日々は過ぎ、両親と食事会の約束をしていた日を迎えた。

 予約していたイタリアンレストランで顔を合わせ、乾杯とお互いの自己紹介を済ませると、父がなぜかしたり顔で微笑む。

「これまで見合い話をことごとく断ってきた息子から極秘で結婚したいと聞いた時は驚きました。しかし、小雪さんの上品で奥ゆかしい姿を拝見して納得しましたよ。息子といるとどうしても目立ってしまって仕事がしにくいでしょうし、なにより遼河。お前が、小雪さんを他の男から隠しておきたいんだろう」

 実の父に〝そんなわけあるか〟とツッコミたい気持ちを堪えつつ、一度小雪を優しい目で見つめた俺は、照れ笑いを浮かべる。

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