愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
とっさに固まる俺の横で、小雪が声を上げた。
「ここへ来る前に、私のリクエストでマカロンを買ってもらいました」
マカロン、という単語でようやく合点がいった。そういえば、今日はホワイトデーか。
すでにでも婚姻届を出したいといった男がホワイトデーを忘れているようでは、これまでの話の説得力が薄れてしまう。
慌てて小雪と目を合わせ、優しく微笑んでみせる。
「ああ、そうだったな。俺は『そんなものでいいのか?』って聞いたのに、それがいいって。たった八個入りのマカロンなのに、大袈裟なほど喜んでくれたな」
小雪のおかげで、俺たちは無事に甘い空気を取り戻す。
一カ月前のバレンタインも確かに彼女と一緒にいて食事もしたが、あの時は結婚さえまだ決まっていなかった。……という本当の事情を、両親に気取られる訳にはいかない。
「まぁ、ご馳走様。それにしても遼河は乙女心に疎いわね。ホワイトデーのお返しにマカロンを選ぶのは、〝あなたは特別な人〟って意味なのよ」
そうだったのか? 小雪はそれを知っていてとっさにマカロンと口にしたのだろうか。
「それにしても、小雪さんは本当に慎ましやかで素敵なお嬢さんだ。遼河、責任を持って彼女を大切にしなさい」
「ああ、わかってる」
「おめでたいから、もう一度乾杯しましょうか」
母のひと声で、俺たち四人はワイングラスを持つ。