愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「そっか。でも、たまには夫婦で食卓くらい囲まないと、いざ妻として誰かの前に出た時、ぼろが出ちゃいそうじゃない?」
「確かに、夫の好物も知らないようじゃダメだよね。料理を作って一緒に食べたっていう事実があれば、夫婦の日常エピソードがひとつできるし。……今度、提案してみる」
「頑張れ。それで家の中の雰囲気がちょっとでもやわらかくなれば、お風呂の壁の件も相談しやすいかもよ」
そうだね、と相槌を打って新しい肉を網に乗せつつ、さっそくどんな料理を作ろうか考え始める。
遼河さんと食事を共にした経験はまだ数回だが、そのほとんどが外食。
または、お互い別々に買ったものを同じダイニングテーブルで黙々と食べるとか、そういうそっけないシチュエーションばかり。
それが契約結婚だと言われればぐうの音も出ないけれど、多少は夫婦らしい空気感を構築する必要があるのではと思う。
遼河さんにも、勇気を出して相談してみよう。
久々の女子会が盛り上がり、帰宅は午後十時を過ぎていた。
門限などは特にないが、結婚してからこんなに帰りが遅くなるのは初めてだったので、なんとなく緊張しながらそうっと玄関に足を踏み入れる。
遼河さんの綺麗な革靴は、すでにきっちり揃えて置いてあった。