愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「遅くなってすまない。本当はもう少し早く用意するつもりだったんだが……」
「そんな、遼河さんはお忙しいんですから気になさらないでください」
いつも遅くまで仕事をしている彼が帰る頃には、店だって閉まっている。マカロンなんて買う暇がなくて当然だ。
「別に時間が作れなかったわけじゃない。ただ、仕事の一環……たとえば氷室エクスプレスの企画でもなんでもなく、素の自分がパティスリーでマカロンを買うという絵面が許せなくて、長いこと店に行くのを躊躇っていただけだ」
彼はそう言って、自嘲気味に鼻を鳴らした。
甘くて愛らしい見た目のスイーツが並ぶ店内で、真剣にマカロンを選ぶ遼河さん……。
確かに、いつものクールなイメージとはだいぶ違うかもしれない。
想像したらなんだかかわいく思えて、ついクスッと笑ってしまった。
「そんなに気になるんでしたら、新町さんに頼めばよかったのでは?」
「……そう言われればそうだな。くそ、失敗した」
後半はかなり声を潜めたみたいだけれど、私には聞こえてしまった。
うちのお父さんの口から出るならまだしも、常にクールで気品あふれる御曹司の彼がそんなことを言うなんて、意外だ。
よほど悔しかったのかも……。
普段と違う彼に少し面喰らいつつも、なんとなく親しみが湧く。