愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「遅くなってすまない。本当はもう少し早く用意するつもりだったんだが……」
「そんな、遼河さんはお忙しいんですから気になさらないでください」

 いつも遅くまで仕事をしている彼が帰る頃には、店だって閉まっている。マカロンなんて買う暇がなくて当然だ。

「別に時間が作れなかったわけじゃない。ただ、仕事の一環……たとえば氷室エクスプレスの企画でもなんでもなく、素の自分がパティスリーでマカロンを買うという絵面が許せなくて、長いこと店に行くのを躊躇っていただけだ」

 彼はそう言って、自嘲気味に鼻を鳴らした。

 甘くて愛らしい見た目のスイーツが並ぶ店内で、真剣にマカロンを選ぶ遼河さん……。

 確かに、いつものクールなイメージとはだいぶ違うかもしれない。

 想像したらなんだかかわいく思えて、ついクスッと笑ってしまった。

「そんなに気になるんでしたら、新町さんに頼めばよかったのでは?」
「……そう言われればそうだな。くそ、失敗した」

 後半はかなり声を潜めたみたいだけれど、私には聞こえてしまった。

 うちのお父さんの口から出るならまだしも、常にクールで気品あふれる御曹司の彼がそんなことを言うなんて、意外だ。

 よほど悔しかったのかも……。

 普段と違う彼に少し面喰らいつつも、なんとなく親しみが湧く。

< 78 / 206 >

この作品をシェア

pagetop