愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「あの、私がコーヒーか紅茶を入れますから、このマカロン一緒に食べませんか?」
少し、緊張しながら提案した。いつもならこんなことは言えないのだけれど、遼河さんの素顔がほんの少し見えた気がしたせいか、今日は心の声をそのまま外に出すことができた。
遼河さんは一瞬きょとんとして、でもすぐに納得したように頷いた。
「……いただこう。この俺が恥ずかしい思いまでして買ったマカロンがまずかったら、店にクレームだ」
「えっ。それはやめた方が」
「冗談だ」
相変わらず冗談がわかりづらい……。
そう思ってしまう私は、きっとまだまだ遼河さんという人を理解していないのだろう。さっきは素顔が覗けた気がしたけれど、それもきっと彼のほんの一面でしかないのだ。
「それより小雪、俺がいつも飲んでいるコーヒーを知らないだろう。豆から挽かないと気が済まないから、自分でやる。きみは自分の飲み物だけ用意すればいい」
「は、はい。了解です」
それから私たちはキッチンへ移動し、私はお気に入りの紅茶を、彼はコーヒーを、それぞれ好きなように淹れる。
別々の行動をとっていても、ふわふわと温かい香りが漂う空間はとても穏やかだ。