愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
琉美にも愚痴交じりに話したように、引っ越してきてからしばらくは、この広すぎる家がぶかぶかの着慣れない服のようで居心地悪かった。でも、今は不思議と、ここが自分の居場所なんだと思えている。
リビングに戻ると、人ひとりぶんの距離は空けつつも、私たちはソファの隣同士に座った。
パステルカラーの箱をさっそく開けてみると、宝石のように色とりどりのマカロンが綺麗に整列していた。
「遼河さん、どれにしますか?」
「そうだな……あまり冒険はしたくないから、茶色の」
「ショコラ味ですね。私はピスタチオにします」
思い思いにマカロンを手に取り、口に入れる。
外側はさっくり、中はしっとりとした生地が口の中で溶け、ピスタチオの濃厚なクリームと一緒に舌の上に広がる。
「美味しい」
「悪くない。俺には少し甘すぎるが」
そう言って、遼河さんはコーヒーカップに口をつける。その横顔がなんだかとても寛いでいる気がして、胸がほっこり和む。
苦手な人だとばかり思っていたけれど、私は単に、彼がどういう人なのかを深く知らなかっただけなのかもしれない。少なくとも、今の彼は私の苦手な『氷室社長』ではない。
ガラス張りのお風呂に慣れるにはまだ時間がかかりそうだけれど、契約妻の役目は一応続けられそう……かな。
とりあえず、一番最初のハードルくらいは越えられたような安心感を覚えつつ、私は次のマカロンに手を伸ばした。