愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「べ、別に手料理で胃袋を掴もうとか、そういう下心があるわけじゃないんです。ただ、この先夫婦として公の場で振る舞う時に、妻の手料理エピソードとかあったらなにかと役立ちそうじゃないですか」
「まぁ、それはそうだが手間じゃないか?」
「今日は予定もないですし、あえてお伝えしていませんでしたが、料理はどちらかと言うと好きな方なので……もし、ご迷惑でなければ」

 ここまで言って断られたら、少しショックだな……。

 でも、遼河さんならバッサリ『いらない』と言いそう……。

「好きにすればいい」
「えっ。……た、食べてくださるんですか?」
「日頃から環境や再生エネルギーについて語ることの多い氷室エナジーの社長が、外食や買ったものばかり食べるのもサステナブルな姿ではないからな。きみが負担でないというなら、ご相伴にあずかる」

 遼河さんが、私の料理を食べてくれる……。それだけのことがこんなに嬉しいなんて、自分でも不思議だ。

「ありがとうございます。張り切って作りますね」
「……味が良ければきみの心持ちはどうでもいい。もう行く」

 相変わらずクールな塩対応だが、二度目の「いってらっしゃい」を口にする私は微笑んでいた。

 彼がああいうそっけない物言いをする時には、なんとなくふたつのパターンがあると思うのだ。

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