愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 ひとつは、本気で呆れたり落胆している時。そしてもうひとつは……新町さんのような、彼にとって気の置けない相手と接する時。

 今のは後者だったんじゃ……? と、勝手に思ってもいいかな。

 なんとなく上機嫌でリビングダイニングに戻ると、なにかが焦げたにおいが鼻についた。

「あ、パン……!」

 慌ててオーブントースターの扉を開けると、表面が真っ黒でカチカチのトーストが出来上がっていた。

 おそるおそる端を齧ると、途端にこの世のものとは思えない苦さに襲われる。

 私こそ、全然サステナブルじゃなくてごめんなさい……。

 誰にともなく心の中で呟くと、黒焦げパンをゴミ箱へ廃棄した。

 午前中はのんびり家事に勤しみ、家にあるものでお昼を済ませた後は、近所のスーパーに出かけた。 

 メイン用の鶏肉と玉ねぎ、卵、サラダに使う野菜、スープの材料、それと切らしていた調味料を買って、家に帰って来た。

「よし、やるぞ」

 実家にいる時から使っていた水色のエプロンを着けて、巨大なキッチンに立つ。

 時間があるので、メインは少し凝ったものを。サラダとスープはシンプルに仕上げようと決め、私は早い時間から調理に取り掛かった。

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