愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
午後六時頃には、メインの鶏肉を揚げる以外の調理は終わっていた。
遼河さんは七時頃に帰れると言っていたから、もう少し待ってからにしようかな……。
時計を見ながらキッチンでそわそわしていたら、玄関で物音がした。
えっ。もしかしてもう帰って来た?
スリッパを鳴らして廊下に出ていくと、正面でちょうど靴を脱いでいる遼河さんと目が合った。
「おかえりなさい。すみません、まだ夕飯づくりが途中で……」
「別に急かす気はない。仕事が早く片付いたから帰って来た。それだけだ」
そっけなく言って、廊下に上がった彼。そのまま部屋のドアに手をかけたと思ったら、ぴたりと動きを止めて私を見る。
「言い忘れてた。……ただいま」
改めてそんな風に言ってくれたのが意外すぎて、私は「あ、はい」という微妙な反応しかできなかった。
キッチンに戻って油を温めながら、ぼんやり思う。
ここは元から遼河さんの家だけれど、わざわざ、私の目を見て『ただいま』って言ってくれた。
それって、空間としての帰る場所という意味の他に、契約妻とはいえ私という存在が彼の帰る場所になっているってこと……?