愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

 いや、考えすぎか。〝ただいま〟なんて子どもでもできる挨拶だし、そんなに深い意味はないよね。

 気を取り直して菜箸を持ち、小麦粉をまぶしてバットに入れておいたひと口大の鶏肉を、溶き卵にくぐらせる。それから温まった揚げ油の中に入れて両面をしっかり揚げていく。

「いい香り……」

 適度に美味しそうな色になったら、ボウルにあらかじめ作っておいた甘酢だれの中に入れた。温かいうちによく絡め、レタスを敷いたお皿に盛りつけていく。

 ちょうどその時ドアが開く音がして、ラフなスウェットのセットアップに着替えた遼河さんが部屋に入ってくる。

 さりげなくこちらに歩み寄ってきた彼は、興味津々な様子で私の手元を覗いた。

「これって……あれか。九州の」
「そうです。チキン南蛮。もうできますからね」

 仕上げに茹で卵と玉ねぎ、ピクルスをマヨネーズで和えて手作りしたタルタルソースをかければ完成。

 ポテトサラダを冷蔵庫から出し、キャベツとベーコンのスープ。それに白いご飯と一緒にテーブルに並べる。

 遼河さんは食卓に並んだ料理をしげしげと眺め、椅子を引いて座った。

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