愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「ありがとうございます。張り切って作った甲斐があります」
「で? なにか欲しいものでもあるのか? 不本意だが、こんなに完成度の高い料理を出されたら、なにもしてやらないわけにはいかない」
「欲しいものは別にありませんが……」
「遠慮するな」
「いえ、遠慮とかではなくて」
美味しいと言ってもらえて、作った私はうれしい。それで終わる話なのに、どうして彼は私になにか与えようとするんだろう。
そういえば、マカロンの時もそうだった。私の咄嗟の嘘でうまく話をごまかせたからって、報酬をやるって……。私はいらないと言ったのに、彼はきちんと後でマカロンを買ってきた。
あの時は、約束を守る律儀な人なのかなと思ったけれど、今は少し印象が違う。
なにかしてもらったら、こちらも返さなければ。そんな気持ちが人より強くて、貸し借りをゼロにすることをまるで義務のように感じているのではないだろうか。
恩を感じたらお礼をするのはごく普通のことだけれど、たったひと言の「ありがとう」でもいいのに。
家族のように親しい相手なら、なおさら。