愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる

「私は、遼河さんが美味しそうに召し上がる姿を見せてもらったので、他にはなにもいりません。あえて欲を言うなら、お皿が全部空になったら嬉しいです」

 気軽な気持ちでそう言ってみたものの、遼河さんは少し気を落としたように息をついた。

「そうか。しつこく聞いて悪かった」
「いえ……。あの、私は今後も、とくになにかしたからって対価を求めたりはしませんので、頼みたい用事とか、食べたい料理のリクエストとかあったら遠慮なく言ってくださいね」

 私にできることなんて限られているだろうけれど、縁があって夫婦になったのだ。たとえ愛がなくても、最低限の信頼関係は築いていきたい。

「……わかった。その代わり、きみも頼まれるばかりじゃなくて、嫌なことは嫌と言ってほしい。ノーと言うの、苦手なタイプだろ。とくに俺みたいな相手には」

 図星だったので、どきりとした。すれ違いの多い生活ばかり送ってきたけれど、意外と彼もちゃんと見ているんだな……。

「了解しました。あの、さっそくいいですか?」
「……ああ。欲しいものより、嫌なことを聞いた方が早かったか。なんだ?」

 私は箸を置いて、廊下へ続くドアの方を振り返った。そして、ずっと我慢していた不満を打ち明ける。

「お風呂の壁が透明なガラスなの、落ち着かなくて……もし、素材を変更できたらありがたいなって」

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