愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「そうだ。庭のガレージに停めてある車って、全部遼河さんの持ち物なんですか?」
「ああ。それくらいしか趣味がないからな」
チキン南蛮のお皿をあっという間に空にした彼が、次はサラダをつまみながら答えてくれる。車の話は好きなようで、表情が緩むのがわかった。
私はガレージに置かれた三台の車を思い浮かべ、中でもとくに目を引く一台について彼に尋ねる。
「あの中だったら、私はブルーの車が綺麗でとてもカッコいいと思うんですけど、あれは氷室自動車製ですか?」
「ああ、ユリシスだな。氷室といっても、父の方じゃなくうちの会社が作ったEV車だ」
「ユリシス……いったいどんな意味なんですか? 造語?」
聞いたことのない単語だったので、会社が創作した名前かと予想して、そう尋ねる。
遼河さんはふっと微笑むと、テーブルに置いてあったスマホを操作してある画面を私に見せてきた。
そこに映っていたのは、ガレージにある車とよく似た、光沢のあるブルーの美しい羽を持つ、一頭の蝶だった。熱帯に咲いていそうな赤い花の上で、優雅に羽を休めている。
「これが、ユリシス。オーストラリア北東部、クイーンズランド州に生息する蝶で、幸せの青い蝶とも呼ばれている」
「綺麗……」