愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
あの日の夜、なかなか寝付けなかった俺は、あきらめて仕事でもするかとキッチンにコーヒーを淹れに行ったのだが。
ペーパードリップでの抽出が終わり、出たごみを足踏み式のゴミ箱に捨てようとした時、そこになにやら黒い物体が捨てられていたのに気づいた。
『なんだこれは……食パン?』
俺は朝食を食べていないので、小雪が焦がしたのだろう。
そういえば、俺の出勤前にパンをトースターに入れていた気がする。その後で、俺を追いかけて廊下まで出てきたのだ。
小雪は頭のいい女性だし、朝食の段取りくらいでつまずくタイプではないと思うのだが、彼女はこうしてパンを焦がした。
夕食を作ってもいいかどうか、俺に許可を得ることで頭がいっぱいだったから……?
勝手な想像とはいえ、その思いつきは俺の胸を微かに揺らした。
契約上の夫婦に情はいらないし、お互いの生活には干渉しない。食事は別々でいいし、俺の分まで用意されるのはむしろ迷惑。
そう思っていたはずなのに……小雪にされるのは不快じゃないらしい。
彼女が俺に好意を抱くことはないと、安心しきっているからだろうか。
なんとなく違うような気もしたが、それ以外の理由は思い当たらなかった。