愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
「なるほど~。さて、ここで視聴者の皆様にクイズです。我らが氷室社長が、この社員食堂で最もお気に入りのメニューはなんでしょう?」
小鹿がカメラに向かってそう問いかけると、一度カットがかかる。
その間に、俺が事前に答えていた社員食堂のお気に入りメニュー、『チーズハンバーグ定食』がテーブルに運ばれてくる。
そこでカメラがいわゆる『物撮り』を始めたので、俺はなんとなく気を抜いて、食堂内の様子を見渡す。
混雑を避けるため、昼休憩から少し遅れた時間に撮影が開始されたため、社員の数はそれほど多くない。その中で、俺の目は窓際で食事をするひと組の男女に目が留まる。
食事をしながらなにか話しているのは、小雪と新町だった。距離があるので声は聞こえないが、新町がなにか言った直後、小雪が楽しそうに破顔した。
俺の前では見せない、自然な笑顔。それを目にした瞬間、胸の奥がちりっとした痛みを覚える。
「氷室社長。そろそろカメラを回してよろしいですか?」
「……あ、ああ」
横から小鹿に顔を覗かれ、慌てて表情を取り繕う。撮影が再開され、物撮りの済んだ定食を前に、再び小鹿が話し始めた。
「はいっ。それでは社長、正解の発表をお願いします」
「私が好きなメニューはこちら。チキン南ば……失礼。チーズハンバーグ定食です」
すぐに言い直したつもりではあったが、カットがかかって撮り直しの指示が出た。