愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
完全に自業自得のミスだったため、スタッフと小鹿に「すみません」と頭を下げる。
「つい出てしまったってことは、社長、最近チキン南蛮をお召し上がりになったとか?」
突然顔を近づけてきた小鹿が、耳元で囁く。きつすぎる香水の香りと、急にパーソナルスペースに入られた不快さから、スッと身を引く。
この小鹿という社員は自分の魅せ方というのをよく理解しており、動画内での立ち居振る舞いは完璧だと毎回感心するが、女性としては苦手なタイプだった。
撮影で一緒になるたびにプライベートに踏み込む質問をしてきたり、むやみに体に触れてきたりする。
どうやら、彼女は俺のパートナーの座を狙っているらしい。
「……まぁ、そんなところだ」
「ご自分でお料理されたんですか? それともお店で?」
小鹿がそう尋ねながら、せっかく俺が空けたはずの距離を詰めてきて、上目遣いをする。
やけに瞬きの回数を増やしたくどい表情に、胃がもたれそうだ。
「撮影に関係ない質問に答えるつもりはない。……ほら、もう準備が済んだようだ」
「……堅いんですね。でも、その方がやる気出ちゃうな」
不吉な言葉を呟いた彼女だが、次の瞬間には仕事用の顔に戻っていた。