愛なき契約結婚のはずが、クールな御曹司の激しい独占愛に堕とされる
彼女がいくらやる気を出したところで、俺にはすでに小雪という妻がいる。この場でそれを暴露できたら楽なのだが、一年間は秘密にするのが小雪との約束なので、耐えるしかない。
俺はその後、小鹿と隣り合っている左半身を強張らせ、心の中で『これ以上寄るな』と呪詛のように唱えることで、なんとか憂鬱な撮影を乗り切った。
撮影スタッフや広報部の面々を見送った後、俺は食堂内のある方向へとズンズンと足を進める。
俺の撮影を見守る役割を忘れたかのごとく、呑気に食事を楽しんでいる秘書を戒めるためだ。
無表情で新町の背後から近づいていくと、向かいに座る小雪が俺の姿に気づき、顔から笑顔を消す。さっきまであんなに楽しそうにしていたのに、俺が近づいた途端にこうだ。
どうすれば、彼女を緊張させずに済むのだろう。
「……楽しそうだな」
「社長。お疲れ様です。無事終わったようですね」
「お前、全然見ていなかっただろ」
文句を言いながら、新町の隣に腰を下ろす。小雪が落ちきなくソワソワし始めるが、食事が済んでいないので席も立てないようだ。