偽王子と、甘い偽恋
「あ…、その…、お恥ずかしいです…」


 私は目を逸らし、蚊の鳴くような声で答える。

 男性への免疫がないばかりに、せっかく見つけた「運命の王子様」候補を前にしても、上手く言葉が出てこない。

 これまで免疫がないなりに、渋谷さん相手ならぐいぐい攻めることができたし、会話に困ることもなかったはずなのに。

 それなのに、目の前の恐らく『おみ』さんを前にすると、全く喋れず目すら合わせられなくなってしまった。

 最悪な出会い方が、派手に転んだ姿だったから、その恥ずかしさが尾を引いているせいもあるのかもしれない。


「女性の身体に傷がつくと大変なので、お気を付けくださいね。レシート持ってお進みください」


 そう言って微笑んだ時の表情が、あまりにも素晴らしかった。見事に、ノックアウト。

 放心して動けない私を、佐々木さんが呆れ顔で引っ張り、別の店員さんにレシートを渡している。

 どうしたらそんな顔面国宝級が生まれるんですか~~~~~~!
 この男性を産んだお母様今すぐ目の前に~~~~~~~!
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