偽王子と、甘い偽恋
「渋谷さんと佐々木さんは同棲とか考えてないんですか?」


 そんな私の質問に、渋谷さんは「うーん」と声を漏らしながら、キーボードを叩き続けている。


「まあ、今も半同棲みたいな感じだけどな。頻繁に泊まりにくるし」

「へぇ、付き合ってからずっと?」

「まあ。最初こそはちゃんと相手の実家に送り届けてたんだけど、俺の家の方が会社に近いし、って言って最近は特にうちにいることが多いかも」

「へぇ」


 渋谷さんと佐々木さんって、なんだかどんな交際をしているのか想像がつかない。二人の話はよく聞くけれど、二人とも性格も思考も正反対な気がするから。

 それに、自分が恋をするようになったからこそ、余計に周りのことが気になる。以前はただの憧れとして聞いていたけれど、今は自分たちとどう違うのか、比べる対象として話を聞いている。

 臣くんと交際を始めてから、そんな意識の変化があった。


「渋谷さんって、佐々木さんの嫌なところあります?」


 そう質問した瞬間、何言ってんだと言いたげな顔でこちらを見られたので、私は首を傾げ返した。


「嫌いなところがない人間なんていないだろ」

「嫌いなところがあったら、交際できなくないです…?だって、その部分が許せないから」

「じゃあ、本田さんの彼氏は完璧なわけ?」


 確かにそう聞かれたら、完璧ではない。

 でも、自分にとって嫌だと思うところは今のところない。
 交際期間がまだ浅いせいだとは思うけれど。


「嫌なところは、あるよ。お互いに、もっとこうしてほしいって言いたくなるようなところ、言ったらキリがないくらいある」

「…何か意外ですね。盲目的に好きって言っているのかと」

「そんなわけねぇじゃん」


 私の勝手なイメージに、渋谷さんは少しだけおかしそうに笑った。
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