偽王子と、甘い偽恋
「嫌なところがあっても、それ以上に好きだよ。というか、そういうところ乗り越えていかなきゃ、一緒にいられないから」

「…直してもらわなきゃ、別れたいとか思います?」

「いや、俺はうまく付き合っていく方法を考えた方が早いって思うかな。直して!っていうほど、そんなめちゃくちゃ嫌ってわけでもねぇし、あんまり直せっていうのもよくない気がする」

「なんでです?」

「その人がずっとそういう考えで生きてきたのを、否定しているような気がするから」


 渋谷さんの考えを聞きながら、色々なことを考えていた。

 なんだか、それってお互いを尊重し合えていないのではないか。
 うまく付き合っていく。確かにその方が平和で簡単かもしれない。
 でも、我慢が蓄積した時、本当に何も言わずにいられるのだろうか。


「なんか言いたそうな顔してんな」

「それって、渋谷さんが我慢してるんじゃないかって思うんです。お互い尊重し合うのが恋人でしょ?」

「んー、俺らはそれで尊重しあえてるからな」

「どういう意味です?」

「俺の話だけ聞いてたら、俺が我慢してるように聞こえるかもしれないけど、逆に相手も、俺と同じように俺の嫌なところと上手く付き合ってくれてるってこと」


 そう言われ、ハッとした。

 確かに、渋谷さんの話を聞いている間、私は渋谷さんの視点にばかり思考が引きずられ、一方的に感情移入していた。

 渋谷さんの言葉で、自分の視野の狭さを痛感したと同時に、この人の懐の深い考え方に感銘を受けた。

 私はこれまで臣くんのことで何度も悩んできたけれど、確かにいつも自分のことでいっぱいいっぱいになって、相手の立場を冷静に考えられなくなっていた気がする。

 渋谷さんたちの付き合い方が、そのまま私たちに合うかはわからない。

 けれど、それでもいつか二人のように、互いの欠点すら包み込んでうまくやっていけるようになりたいと思った。
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