偽王子と、甘い偽恋
 渋谷さんのためになる話を聞いて終えた、仕事帰り。

 帰るための支度を済ませると、そのまま急いでビルの一階まで降りた。

 いつもなら、もうそこに臣くんが立っていてくれるのだけれど、今日はその姿が見当たらない。不思議に思って辺りを見渡してみると、一台の白いセダンがハザードを点滅させ、路肩に停車していた。

 なんとなくそちらを眺めていると、中からスーツを纏った、それはそれは麗しい王子様が降りてきた。


(車が白馬に見える…)


 なぜか車体からまばゆい後光が放たれている気がして、直視できず、思わず手のひらで目を覆いながら彼を見た。

 その王子様が、真っ直ぐこちらに近寄ってくる。


「何してんの」

「眩しくて」

「は?」


 陽は沈みかけていて、本来なら眩しさを感じるような時間帯ではない。
 なんなら、もう夜の(とばり)が辺りを包み始めようとしている。

 臣くんは、昼間にどこぞのS先輩が見せていたようなわけわかんねーと言いたげな表情を浮かべた後、私の手を引いた。


「行くぞ。飯食ってこ」

「まさかのエスコート…!」

「さっきからまじで何言ってんの?」


 止まることのない王子様全開の挙動に、完全ノックアウト!
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