偽王子と、甘い偽恋
 連れてこられた場所は、都心から少し離れた静かな場所にある、隠れ家のようなお洒落なレストランだった。

​ 重厚な茶色のドアを開けると、外の暗さとは対照的に、天井からは宝石のように輝くシャンデリアが眩い光を放っている。

 すぐにタキシードを纏った執事のような制服を着たスタッフが音もなく歩み寄り、深く頭を下げて私たちを出迎えた。


「お待ちしておりました、千早様。御着物お預かりいたします」

「お世話になります」


 臣くんは慣れた様子で応じ、当たり前のような動作でスタッフに上着を預ける。その迷いのない振る舞いを唖然と眺めていると、彼は不思議そうにこちらを見て首を傾げた。


「なにしてんの」

「あ、え?いや…、今日…」


 何かの記念日だっけ…?

 そう問いかけようとしたけれど、人を待たせているので、急いで上着を脱ぎ、スタッフに預けた。

 安い居酒屋や、少しおしゃれなダイニングバーなどで食事することは多々あった。

 こんな高級レストランは初めてだ。

 だけどわかるのは、当たり前にここでVIP対応される彼は、やはりきちんとした家柄の人なのだと改めて実感する。

 そのまま臣くんは慣れたように私の手を引くと、広い高価そうな絨毯を踏みしめて歩く。

 どこへ向かっているかもわからないまま、彼に行く先を委ね、スタッフがこぞって臣くんに頭を下げるのを見ていた。
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