偽王子と、甘い偽恋
腹黒王子は嘘吐き?
「やだやだやだやだ!臣くんの嘘吐き!」

「仕方ねぇだろ!俺も行きたくねぇよ!」


 大きなスーツケースにパッキングを急ぐ臣くんの腰にしがみつき、私は全力で駄々をこねていた。

 それでも気にせず荷詰めする彼を、なりふり構わず引き留めている。


「行かないで~!臣くん!」

「そんな今生の別れみたいなこと言うな!たかが一週間の出張だろうが!」


 そう、出張。期間はたった一週間。

 だけど、今の私にはそれすらも耐え難かった。

 寂しい。あまりにも寂しすぎる。
 それに、臣くんが淡々と準備を進めているのが、余計に切ない。
 この男には少しも寂しいとか、そんな感情はないのか、この男には。

 ぐすん。と嘘泣きをしてみても、臣くんはそれを完全にスルーして手を動かし続けている。

 急遽、明日の早朝便で発つことになったらしく、準備ができ次第、仮眠を取ってすぐに出てしまうらしい。


「どこも行かないって言ったくせに嘘吐き~!」

「メンヘラ彼女みたいなこと言うな!」

「置いてったら死んじゃうから!」

「お前こそ、だりぃ嘘吐くな!」


 そんな攻防戦を繰り返し、最後には臣くんに蛇のような睨みを利かされて、私はようやく小さく縮こまった。

 臣くんの出張先はアメリカだ。長いフライトになるため、一刻も早く準備を終えて休むべきなのは分かっている。なのに、私は邪魔ばかり。

 だって、アメリカなんて不安しかない。あそこにはフレンドリーでナイスバディで、ダイナマイトな女性がいっぱいいるに決まっている。それに比べ、私は全体的にちまっとしたサイズ感。

 あの有名なネットミーム、「そんな身体(装備)で大丈夫か?」と自分に問いかけてしまうほど。情けない。
< 116 / 177 >

この作品をシェア

pagetop