偽王子と、甘い偽恋
 臣くんが旅立ち、四日が経った。

 連絡は、ほとんどなし。私からの«おはよう»とか«おやすみ»という連絡に対し、どちらか一方の返事が一日に一通入っているだけ。

 ものすごく忙しいことは理解できている。
 だからもう、今はわがままを言ったりはしない。

 だけど、私の臣くん不足は深刻化していた。相変わらず臣くんの部屋でゴロゴロしながら、薄れてきた彼の匂いを吸い込んでいる。

 換気しないと、臣くんが帰ってきた時に体に悪い。
 だから、帰ってくる直前にするつもり。

 「今もしろよ」と言われかねないけれど、今はまだ、この匂いが消えてしまうのが悲しい。縋れるものが、匂いとスマートフォンの中の写真しかないのだから、そのどちらかが失われることには耐えられそうになかった。

 そんな時だった。

 私のスマートフォンからメロディーが流れ出し、慌てて画面を確認する。そこには臣くんの名前が表示されており、私は震える指でボタンをスワイプした。


「もしもし!?」

『はは、デジャブ』


 四日ぶりに聞く、大好きな臣くんの声。
 それだけで、思わず涙が零れそうになる。


『いい子にしてた?』

「…してないかも」

『あ、そう。帰ったら躾けなきゃ』


 そんなサディスティックな発言にまでときめいてしまう私は、きっと重症なのだと思う。会えるなら、躾だろうがなんだろうがかまわない。
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